手札破壊を理解しよう

手札破壊を理解しよう

手札破壊は、直接的なクリーチャーの除去と並んで、黒に与えられた役割の1つです。

モダンには、《思考囲い》や《コジレックの審問》をはじめとした、強力な手札破壊呪文が存在しています。環境にはジャンドやシャドウなど、手札破壊をその戦略に組み込んだデッキも一定数あり、モダンをプレイする上で手札破壊を理解することは避けては通れません。

今回は、《思考囲い》に代表されるような、1枚ハンデス1ハンデス:手札破壊の英語表記である、Hand Destructionを略してそう呼ばれる。させる呪文について、触れていきます。

手札破壊によるカードの交換

1:1交換という言葉は、誰しも一度は聞いたことがあるものではないでしょうか。MTGは、基本的にはカードの交換を重ねていくゲームであり、その中で最も基本となる交換が、1:1交換(お互いのカード枚数に差が出ない)です。

1:1交換

思考囲い》のような1枚ハンデスさせる呪文も、”通常は”これに該当します。そのため、前提として1:1交換を上手く活用できるデッキに、手札破壊呪文の居場所があります。モダンにおいては、ジャンドやシャドウデッキがその最たる例であり、逆に黒を取っていてもヨーグモスサクリファイスなどでは手札破壊呪文は(メインボードには)採用されません。

しかし、手札破壊呪文には空振りしてしまうリスクがあります。空振りとなった手札破壊呪文は、(後述しますが情報を得る以外には)何もしておらず、ただただ一方的にあなたが損をすることになります。このリスクがあるため、手札破壊呪文はあくまで通常は1:1交換ができるという表現に留まってしまいます。

なお、《思考囲い》はこの空振りというリスクを最小限にできるために、2点のライフ損失を伴ってもなお最強の手札破壊呪文と評価されているのです。

ドローステップに、えいっ!

また、後半に引く手札破壊は弱いと言われがちです。トップデッキ勝負に弱いというものですね。これは、手札破壊が相手の行動より前に唱えなければならない性質によるものです。こういった点から、《コラガンの命令》がインスタントでありつつハンデスモードを備える点が、いかに強力であるかが分かると思います。

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テンポから見る手札破壊

MTGのゲームにおいて、テンポは大切な要素です。

重たい呪文が避けられがちなのは何故でしょうか?その理由の1つは、《破滅の刃》や《対抗呪文》などのような軽い呪文で、簡単に対処されてしまう可能性があるからです。もし5マナのクリーチャーを先の呪文で対処されてしまったら、差し引き3マナ分をあなたは損してしまうことになります。

うわーーーー

このようなテンポの面から見て、手札破壊はどうでしょうか。手札破壊はその性質上、相手の行動より先んじて唱える必要があるため、この場合相手はマナを支払っていません。つまり、手札破壊呪文は唱えた段階で、テンポ面においては損をしてしまうのです。

ここに先の空振りが重なると、表面上のアドバンテージ換算としては目も当てられません。カードとマナと、《思考囲い》であればライフも失う、手札破壊呪文以外ではそうそう起こらない悲惨な状況です。

手札破壊はいつ、どのように強力か

そんな複数の欠点を踏まえてもなお、手札破壊呪文はあらゆる環境にその居場所があり、活躍しています。それは、手札破壊呪文がデメリットを超えてあまりある強力さを備えているからに他なりません。

実際、テンポ面の僅かな損を踏まえても、手札破壊が1対1交換を効率良く行える呪文であることは間違いありません。僅かな(≒1マナ)コストで1:1交換を可能とし、ETB能力が誘発されたり、忠誠値能力を1度使われてしまうこともありません。

そんな効率的な1:1交換であっても、ゲームによって向き不向きが生じてきます。ある程度手札破壊呪文を使った経験のある方なら、こういうマッチアップで入れる/抜くというような、セオリーを聞いたこともあるのではないでしょうか。具体的には、「アグロには抜く、コンボ・コントロールには入れる」、というような。

実際、この考えはおおよそ間違ってはいません。しかし、大事なのはなぜそのマッチアップでそうするのか、この裏付けです。これを理解するためには、どのようなときに手札破壊呪文が強力に作用しているのかを知る必要があるでしょう。

1ターン目の手札破壊

ご存知のとおり、1ターン目の手札破壊は非常に強力です。

1ターン目に《思考囲い》を唱えると、これらに加えて雑多な土地というような手札が見えた。対アミュレットタイタンでは起こりがちな状況です。この場合、即座に《精力の護符》を抜くことになるでしょうが、それは何故でしょうか。

答えは単純で、《精力の護符》さえ抜いてしまえば、3ターン目まで何もできない状況に押しやれそうだからです。当然ながら、《精力の護符》はデッキに4枚しかなく、追加で引かれない限りはこの状況が続きます。このように、特定のカードを失うことで、デッキが機能しづらくなる=冗長性2冗長性:ITでよく使われる用語。冗長化(じょうちょうか)とは、システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、障害発生後もシステム全体の機能を維持し続けられるように、予備装置を平常時からバックアップとして配置し運用しておくこと。冗長化によって得られる安全性を冗長性と呼ぶ。MTGにおいては、ミッドレンジデッキやグッドスタッフを想像してもらえれば良い。の低いデッキに対して、手札破壊呪文は非常に優秀な働きをします。

このようなマッチアップでは、手札破壊で序盤の動きを崩し、相手が立て直す前に勝利するというのが基本的な流れです。

逆に、手札破壊呪文が効果的でないのは冗長性の高いデッキに対するときです。同じような役割を持てるカードに溢れたデッキですね。一般的なアグロデッキや、ミッドレンジデッキのほとんどはこれに該当します。

どれを抜いても、代役が存在する

手札から何かを抜き去ったとしても、それと同じような、あるいはそれ以上のカードがすぐに相手の手札には舞い込みます。こうしたとき、先述のとおりあなたはただひたすらテンポを失うに留まるのです。そうであるなら、実際に脅威が出てから、最も強力なものに対処することを選択できる除去呪文や、相手にプレッシャーをかけられるクリーチャーに優位性があります。

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もっと理論的に、いつ手札破壊は強力か

これまで簡単な実例を持ち出しつつ、手札破壊が強力に左右する状況について話してきました。ここからは、より理論的に、あるいは抽象的に手札破壊が強力である可能性が高い状況について触れていきましょう。

手札破壊が強力となるか否かについては、最序盤、冗長性の有無の点は既に触れました。これら双方を踏まえたとき、どのようなゲーム展開を想像できますか?

序盤に相手の動きを崩し、早期にクロックを展開。引き続き妨害と脅威の展開を行い、なるべく早いターンに勝利を目指す。こうではないでしょうか。つまり、手札破壊が有効に働くマッチアップの条件の1つは、勝利までにかかるターンおよび使用するカードの枚数が少ないときです。

何が足りていない=冗長性が低く穴を作れそうか?

コンボデッキやコントロールデッキに対して、手札破壊が有効であることは、まさしくこれに該当します。コンボデッキは特定のカードをキーとしていますし、コントロールは打ち消しや除去を状況に応じて使い分ける必要があり、短期的には常にその時ごとのキーカードを求めている≒冗長性の低いデッキと言えます。

逆に、冗長性の高いデッキとのマッチアップでは基本的に不要となります。一般的なアグロデッキやミッドレンジデッキのほとんどがこれに該当します。ジャンドミラーで手札破壊をサイドアウトするというのは、これが理由です。

なお、例外的にバーンデッキに関しては、冗長性こそ備えてはいますが、短期での勝負を挑むことになるため、手札破壊が有効となります。

手札破壊で何を抜くべきか

手札破壊呪文を唱えても、何を抜くべきか分からないという方もいらっしゃるでしょう。実際、手札破壊に限らずあらゆる選択は結果論になってしまうことも多く、これはランダム性のあるMTGでは避けられません。

しかし、それを踏まえた上でも基準となるべき思考パターンは持ち合わせるべきです。手札破壊で抜くべきカードの基準が定まれば、自ずと手札破壊呪文を唱えるべきタイミングも見えてきます。

以下は、代表的な手札破壊の選択基準です。

  • デッキ内に、そのカードへの回答がない、あるいは少ない
  • そのカードを抜くことで、自身のゲームプランを押し通せる
  • そのカードを抜くことで、相手のゲームプランを崩せる
  • 一番強いカードを抜く
デッキ内に回答がない、あるいは少ない

呪禁持ちのクリーチャーや、忠誠値の高いプレインズウォーカーなど、デッキの構造によっては出てからの対処が難しいカードを手札破壊によって抜き去ります。対処が難しい脅威は、それだけでゲームを支配されることに繋がりますので、手札破壊呪文でそれが見えたのなら、抜き去ってしまいましょう。

この場合、唱えるべきタイミングは該当する脅威が唱えられる直前です。もし《ドミナリアの英雄、テフェリー》が対処できないなら、相手が5マナに届く直前がそのタイミングとなります。

自身のゲームプランを押し通す

先ほどとは逆のパターンです。除去呪文を抜き去って、自身の脅威を戦場に定着させたり、打ち消し呪文を抜き去って、特定の呪文を解決させるために使用します。コンボデッキなどが(主にサイドインして)手札破壊を使用する場合も、これに該当します。

この場合、唱えるべきタイミングは、手札破壊によってサポートしたい呪文と同じターン、あるいはその直前のターンになります。

余談にはなりますが、トップデッキした手札破壊呪文を意味もなく即座に唱えてしまったことはありませんか。もしそういった経験がおありであれば、このタイミングを意識することで、より有効に手札破壊呪文を使用できるかもしれません。

相手のゲームプランを崩す

最序盤(特に1ターン目)に唱えた場合に多い選択です。マナクリーチャーや《樹上の草食獣》、《楽園の拡散》など、相手の1ターン目の動きを封じることで、そのペースを大きく乱せるカードを抜き去ります。こういったカードは、基本的にゲーム展開を早めるものが多く、そのペースを落とすことで、自身の戦いやすい状態へ持っていくことが可能です。

一番強いカードを抜く

当たり前そうで、なかなか実行されていない選択が、このパターンです。自身と相手の双方ともに、ミッドレンジやコントロールを使用している場合には、有力な選択となります。

瞬唱の魔道士》や《精神を刻む者、ジェイス》、《勝負服纏い、チャンドラ》のようなリソースを稼がれるカードのように、最も強力なカードを抜き去ります。この選択基準はゲームが長引くことを想定したものであり、余程のことがない限りはただのキャントリップ呪文などは抜くべきではありません。

これが1ターン目で、相手の手札に少ない土地と《血清の幻視》が見えたのなら、《血清の幻視》を抜いてしまいたくなるかもしれません。相手をマナスクリューに追いこもうという算段ですね。しかし、これはあまりオススメできません。もしマナスクリューから相手が抜けだしたのなら、抜かなかった強力なカードでゲームを支配されてしまいますし、抜け出せないならそのまま勝つでしょうから。

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得られた情報を活用する

相手の手札を確認できることも、手札破壊呪文が強力な理由の1つです。情報アドバンテージは過小評価されがちですが、相手の行動やデッキタイプを読み取れ、自身がどう行動するべきか、その道筋を教えてくれます。

カードの枚数差のようなハッキリと目に見えるものでないだけに、情報の価値を明確にすることは難しいですが、少しのヒントで難問だったゲームがいとも簡単になることもあります。

手札破壊呪文を活用しよう

手札破壊呪文について、少しでも理解が深まったでしょうか。手札破壊は非常に強力なものですが、扱い方次第でその価値は大きく変わってしまいます。

ただ唱えればよいわけではない、奥深い手札破壊の世界。もしこれから手札破壊呪文をデッキに組み込むのなら、その指標に、これまでも使用されていたのなら、その使用方法の更なる洗練のために、本記事が役立てば幸いです。

簡単なまとめとしては、冗長性の高いデッキやトップデッキ勝負に強いデッキには、(特にメインボードにおける)手札破壊呪文はあまり有効ではありません。そのため、手札破壊呪文を備えるデッキを選択するか否かは、環境を見渡し、有効に活用できるタイミングを見極めましょう。

なお、手札破壊呪文の解説については《思考囲い》に着目してChannelFireball所属のプロプレイヤーReid Dukeが執筆された、「Thoughtseize You」という素晴らしい記事が存在しています。少し古い記事ではありますが、内容は今も通じるものですし、日本語訳されたものも見受けられますので、是非一度お読みになられることをオススメします。

脚注一覧

  • 1
    ハンデス:手札破壊の英語表記である、Hand Destructionを略してそう呼ばれる。
  • 2
    冗長性:ITでよく使われる用語。冗長化(じょうちょうか)とは、システムの一部に何らかの障害が発生した場合に備えて、障害発生後もシステム全体の機能を維持し続けられるように、予備装置を平常時からバックアップとして配置し運用しておくこと。冗長化によって得られる安全性を冗長性と呼ぶ。MTGにおいては、ミッドレンジデッキやグッドスタッフを想像してもらえれば良い。

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