なぜ《死儀礼のシャーマン》は許されないのか?

なぜ《死儀礼のシャーマン》は許されないのか?

モダンにおいて、カードの禁止・禁止解除は多くのプレイヤーの関心を集めています。

近年の禁止改定においても、《精神を刻む者、ジェイス》や《石鍛冶の神秘家》の禁止解除は、非常に大きな注目を集め、その是非について議論を巻き起こしました。その他、度々話題に挙がるものとしては《欠片の双子》の禁止解除や、《ウルザの塔》をはじめとするウルザランドの禁止について等が挙げられます。

そうした禁止改定について、近頃特に話題の中心であるのは《敏捷なこそ泥、ラガバン》でしょう。1マナの非常に強力なクリーチャーである事は、今更説明するまでもないでしょうが、この海賊猿の存在によって禁止解除できるのでは?と議論に挙がっているクリーチャーがいます。

デスフィッシュって知ってます?

死儀礼のシャーマン》です。《敏捷なこそ泥、ラガバン》と同じく、1マナの超強力なクリーチャーとして、モダンで大活躍したこのカードの禁止解除の可能性について、今回は取り上げていきたいと思います。

禁止解除は無理

いきなり結論になってしまいますが、《死儀礼のシャーマン》の禁止解除は絶望的です。こればかりは100%無理と言っても差し支えないでしょう。

推測でものを言うのは心苦しいのですが、敢えて言わせてもらうのであれば、「《敏捷なこそ泥、ラガバン》が許されるのであれば《死儀礼のシャーマン》もいいのではないか」と語られている方は、《死儀礼のシャーマン》を使った・使われた事が無いのではないでしょうか。そう思ってしまう程に、このカードはぶっ壊れています。

ここから先は、《死儀礼のシャーマン》がいかに壊れたカードであるのかについて、順に説明していきましょう。

1マナのプレインズウォーカー

死儀礼のシャーマン》が優秀な点は、以下の通りです。

  1. 混成マナであるため、採用できるデッキが多い
  2. マナ加速により、テンポ面で優位に立てる
  3. ライフゲイン能力により、延命ができる
  4. ライフルーズ能力により、クロックとなる
  5. 相手の墓地でも対象に取れるため、メインボードからの墓地対策になる
  6. 先の2~5は、起動型能力であるため、任意のタイミングで使用可能であり、攻撃に参加する必要もない
  7. ゲーム後半に引いても腐らない
  8. パワーが1あるため、攻撃に参加することも可能

1マナのクリーチャーにこれだけ語れるメリットがあるのも、そうあるものじゃないですね。順に見ていきましょう。

混成マナであり、マナクリーチャーである

モダンの土地事情は、フェッチランドとショックランドを中心に構成されており、その多色化の容易さは言わずもがなです。《ラウグリンのトライオーム》をはじめ、トライオーム・サイクルが追加された今では、その特徴は更に一歩進んだ状況となっています。

多色化が容易である事は、《死儀礼のシャーマン》のために黒か緑を足す事が容易である事を意味します。実際に、過去のモダン・レガシーではあらゆるデッキに《死儀礼のシャーマン》が組み込まれました。最終的に抜けこそしましたが、レガシーでは、デスフィッシュ1デスフィッシュ:レガシーのマーフォークに《Underground Sea》を入れる事で、《死儀礼のシャーマン》を組み込んだ意欲作。そこまでするか。なんてデッキまで出てきた始末です。

多色化の弊害も、《死儀礼のシャーマン》のマナ能力2マナ能力:《死儀礼のシャーマン》の1つ目の能力は、厳密にはマナ能力ではない。マナ能力はスタックを組まないが、これはスタックを組むため、対象の土地が墓地から無くなれば立ち消える。ここでは簡略化のため、マナ能力と呼ぶ。によって解決されてしまうため、デメリットはほぼ無いと言って問題ありません。

時折感じることとして、WotCは混成マナを捻出する容易さを理解していないのではないか?というものがありますが、ここではこれ以上の言及は避けておきましょう。

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マナ加速だけでなく、その他にも仕事を持つ

マナ・クリーチャーは、ゲーム展開を有利に組み立てるためにとても役立つ生物です。通常は、1ターンに1度しか土地を置けない事が、実質的にそのルールを破壊するマナ・クリーチャーの強力さを物語っているでしょう。しかし、それはあくまでもゲーム序盤に限った話であり、中盤(3マナ域程度)以降に引くマナ・クリーチャーの弱さもまた、マナ・クリーチャーが持つ特徴の1つと言えます。

ですが、《死儀礼のシャーマン》は違います。墓地を活用したライフゲイン/ルーズ能力により、ゲーム中いつ引いても困らないだけの仕事をこなす事ができます。

ライフゲイン能力は、バーンに対して大きな役割を持ちますし、ライフルーズはそのままフィニッシャー足り得ます。

死儀礼のシャーマン》がそのコストに墓地を使用する点も、問題です。クリーチャー・ソーサリー・インスタント、これら3種類限定とは言え、《死儀礼のシャーマン》が立っている限りはこれらをリアニメイトしたり、回収したりする事はほぼ不可能になります。現在のモダンでは、《残虐の執政官》を主軸に据えたエスパーリアニメイトやジェスカイフェニックス等も存在していますが、《死儀礼のシャーマン》が環境にいれば、まずこれらのデッキを使おうとは思わないでしょう。

その強力さ・仕事量の多さから、一部では《死儀礼のシャーマン》を1マナのプレインズウォーカーと呼ぶ程です。1ターン目からゲーム最終版までいつ引いても大抵は嬉しいカード、序盤しか活躍しにくい《敏捷なこそ泥、ラガバン》とは大きな違いです。

攻撃する必要はないが、攻撃する事もできる

死儀礼のシャーマン》は、どの能力も起動型能力であるため、攻撃に参加する必要がありません。そのため、突如現れた《瞬唱の魔道士》や《忍耐》等にブロックされて姿を消す恐れが無いのです。

しかし、その癖《死儀礼のシャーマン》にはパワーが1設定されています。バウンス能力起動後に忠誠値が1となった《時を解す者、テフェリー》を落としたり、墓地にスペルが無い場合に最低限のクロックとして攻撃に参加する事も可能なのです。何なら、《敏捷なこそ泥、ラガバン》と相打ちする事も出来ます。

過剰に役割を持つことの危険性

死儀礼のシャーマン》が如何に危険であるかは、上記の通りです。

マナ加速し、回復し、攻撃せずともクロックとなり、攻撃もでき、墓地対策もできる。これらの要素がたったの1マナで、黒でも緑でも可能なのです。ここまで聞いて、モダンで使えるべきだという意見は、流石に湧かないのではないでしょうか。

これを理由に《敏捷なこそ泥、ラガバン》が適正であるとは言えませんが、現在のモダンのメタゲームを見る限りでは許容されるのではないか?と感じさせられます。序盤を逃せば、攻撃を通せる機会を見つけにくく、攻撃が通っても「宝物」トークンを得るだけに留まる事も多々あります。

むしろ役割の多さという点では、《敏捷なこそ泥、ラガバン》よりも《時を解す者、テフェリー》や《創造の座、オムナス》の方が危険な存在なのではないでしょうか。1枚で非常に多くの役割をこなし、そのどれもが一線級のものであるため、色が許せば取り得という状況になってしまっています。

モダンホライゾン2により、大量に強力なカードが加わったモダンですが、奇跡的にと言うべきか、その環境は安定しています。安定したメタゲームを喜ぶ一方、何らかの変化を求めてしまうのもプレイヤーの性(さが)というものでしょう。是非、次の禁止改定では、禁止ではなく、解除の方向で何か変化を与えてもらえればと思う次第です。もちろん、《死儀礼のシャーマン》以外で。

脚注一覧

  • 1
    デスフィッシュ:レガシーのマーフォークに《Underground Sea》を入れる事で、《死儀礼のシャーマン》を組み込んだ意欲作。そこまでするか。
  • 2
    マナ能力:《死儀礼のシャーマン》の1つ目の能力は、厳密にはマナ能力ではない。マナ能力はスタックを組まないが、これはスタックを組むため、対象の土地が墓地から無くなれば立ち消える。ここでは簡略化のため、マナ能力と呼ぶ。

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