変身デッキの最新型:不屈の独創力

最強のクリーチャーと言えば、やっぱりコイツ

出せばほぼ勝ちとも言えるクリーチャーである、《引き裂かれし永劫、エムラクール》。

新セットのカードリストが公開される度、このクリーチャーをマナコストを踏み倒して呼び出す術が無いかに注目しているプレイヤーは、数多くいる事でしょう。今回は、そんな《引き裂かれし永劫、エムラクール》を呼び出す事に注力した《不屈の独創力》デッキをご紹介します。

デッキの概要

gnorilgrande – 不屈の独創力
Magic Online – Modern League – 2021/08/17(5-0)
– メインボード(60)-
– 土地(24)-
4《乾燥台地
2《血染めのぬかるみ
4《ドワーフの鉱山
1《
1《ケトリアのトライオーム
1《
1《ラウグリンのトライオーム
1《聖なる鋳造所
4《沸騰する小湖
2《蒸気孔
1《踏み鳴らされる地
2《樹木茂る山麓
– クリーチャー(1)-
1《引き裂かれし永劫、エムラクール
– スペル(35)-
2《先駆ける者、ナヒリ
4《時を解す者、テフェリー
4《レンと六番
4《堅固な証拠
4《不屈の独創力
4《虹色の終焉
2《遅延
4《稲妻
4《プリズマリの命令
2《差し戻し
1《サメ台風
– サイドボード(15)-
3《霊気の疾風
2《高山の月
2《狼狽の嵐
2《神秘の論争
1《平地
2《安らかなる眠り
1《セラの使者
2《破壊放題

冒頭でもお話しました通り、このデッキは《引き裂かれし永劫、エムラクール》を呼び出すデッキです。その為、デッキ全体としてそれをサポートする構造となっています。

とてもキレイなイラストから出てくる怪物

引き裂かれし永劫、エムラクール》を呼び出す為のスペルである、《不屈の独創力》がこのデッキのキーカードです。アーティファクトかクリーチャーをX個破壊し、その数に等しいアーティファクトかクリーチャーを、それらのコントローラーはライブラリーの上から捲っていき、見つかったそれらを戦場に出す事が出来ます。このデッキでは呼び出せる対象が《引き裂かれし永劫、エムラクール》しか入っていない為、X=1でキャストし、自身のアーティファクトかクリーチャー1個を対象にしたこのスペルが解決すれば、見事作戦成功です。

デッキに掛かる制約と、その解決策

不屈の独創力》で《引き裂かれし永劫、エムラクール》が出る事は先の通りですが、ここで問題が発生します。《引き裂かれし永劫、エムラクール》をヒットさせる為に、他にアーティファクトやクリーチャーは1枚も入れられないのです。《不屈の独創力》の為に必要なのに入れられない、この矛盾を解決する為の手段が、このデッキには散りばめられています。

アーティファクトとクリーチャーを、トークンとして用意出来るスペルや土地たちです。

堅固な証拠》は、モダンホライゾン2から加わった強力な新戦力です。0/3の「蟹」トークン(クリーチャー)と「手掛かり」トークン1手掛かり:「(2),このアーティファクトを生け贄に捧げる:カードを1枚引く。」を持つ無色のアーティファクト・トークン(アーティファクト)の2つを1枚のスペルからたった青1マナで用意出来ます。《不屈の独創力》に必要な種の用意だけで無く、序盤はブロッカー兼ドローを進める為にも活用出来ます。

ドワーフの鉱山》は他に山が3つ以上あれば、ETB能力で1/1の「ドワーフ」トークンを引き連れます。条件達成が出来なければ、トークンが出ない上にタップインする劣化《》ですが、基本土地タイプを持つ為、フェッチランドから探し出せるのは魅力的です。条件を達成する為、デッキ内の土地は1枚の《》とフェッチランドを除いて全て基本土地タイプ《》を持つ土地で構成されています。そもそも《不屈の独創力》の「赤赤赤」を支払う為にも、大量の赤マナが必要な為、理想的な土地構成と言えます。

サメ台風》は、青白系のコントロール等でよく見かけるカードですが、このデッキでもトークンを呼び出しつつドローを進められる為、有用な1枚です。インスタント・タイミングで動ける魅力こそありますが、先の2枚に比べれば重たい為、枚数は抑えられています。なお、《サメ台風》を扱う全てのデッキに言える事ですが、状況に応じて素出し=エンチャントとして設置する事も考えておきましょう。《引き裂かれし永劫、エムラクール》と土地以外は、全てがスペルで構成されている為、強力な勝ち手段となり得ます。

デッキを大きく進化させた《プリズマリの命令》

「ストリクスヘイヴン:魔法学院」にて収録された《プリズマリの命令》は、このデッキにとって至高の1枚です。このカード1枚で、

  • 除去或いは最後の一押しの2点ダメージ
  • 必要なカードを探し出す、或いは手札にある《引き裂かれし永劫、エムラクール》を捨てられる、ルーティング2ルーティング:カードをx枚引いて、y枚捨てるスペルの俗称。パーマネントの場合には、ルーターとも。
  • 不屈の独創力》に必要な種としての、宝物3宝物:「(T),このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクト・トークン。トークンの生成
  • 先駆ける者、ナヒリ》から《引き裂かれし永劫、エムラクール》を呼び出す際に問題となる、《墓掘りの檻》の除去

この通り、このデッキでやりたい事を一通り行えます。このデッキに限って言えば、滅茶苦茶です。

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打ち消し呪文の選択

打ち消し呪文として、このデッキでは《差し戻し》と《遅延》が採用されています。打ち消し呪文と言えば、モダンホライゾン2で《対抗呪文》が収録され、ついにモダンリーガルになったと話題になったのも記憶に新しい所です。《対抗呪文》は、「最強の打ち消し呪文は何か?」と問われれば、答えに挙がってくる事も多い非常に強力な打ち消し呪文です。そんな《対抗呪文》がありながら、このデッキで《差し戻し》と《遅延》が採用されている事にはもちろん理由があります。

まず、最も単純な理由として、このデッキで「青青」を捻出する事は難しいでしょう。キャスト出来ない呪文なら、手札にあっても無いのと変わりません。それに対し、他2枚は「1青」と現実的なマナコストです。

ここからは、もっと実践的な理由となります。

差し戻し》は一時的な打ち消しであり、キャントリップによりドローを加速させます。このドローは、《差し戻し》によって打ち消せたかに関わらない為、《突然の衰微》に代表される打ち消されない呪文に対しても、単なるドローカードとして運用する事も可能です。目的のカードを探す手助けとなるでしょう。また、《差し戻し》を自身のスペルを対象にキャストする事も重要なテクニックです。例えば、《不屈の独創力》が打ち消されそうになった際にそうする事で、《不屈の独創力》を失う事無く、ついでにカードを1枚引けます。

遅延》も《差し戻し》と同様に、一時的な打ち消し呪文であり、3ターン後に帰ってきてしまいます。このデッキでは《時を解す者、テフェリー》も採用されており、彼と《遅延》の関係性は面白いです。《遅延》によって打ち消された呪文は、「待機」カウンターが置かれた状態で追放されます。「待機」された呪文は、「待機」カウンターが無くなったアップキープに唱えられますが、《時を解す者、テフェリー》が戦場に存在すれば、彼の常在型能力により唱える事が阻止されてしまうのです。ただし、《差し戻し》と違い、《遅延》で《不屈の独創力》は守れない事には注意しましょう。3ターン後に帰っては来ますが、その時の《不屈の独創力》のXは0です。何も起こりません。

また、このデッキがコンボデッキである点も、これら2枚を採用する理由になっています。《差し戻し》《遅延》共に、一時的な打ち消しですが、コンボが決まりさえすれば大抵勝てる為、一時凌ぎで十分なのです。

余談となりますが、《対抗呪文》がモダンリーガルとなるに際し、界隈では様々な意見・感想が飛び交いました。その中には、《差し戻し》が《対抗呪文》の下位互換であるような説明も広まってしまっていましたが、決してそのような事はありません。《遅延》もそうですし、《マナ漏出》や《論理の結び目》も同様です。あ、でも《取り消し》は流石に下位互換かも知れません。

《変身》と《異形化》は必要ない?

不屈の独創力》と同じような事が出来る《変身》及び《異形化》ですが、マナコストの緩さ以外には双方共に問題点があります。

まず、《墓掘りの檻》に引っ掛かってしまいます。これら2枚は挙動としては、ライブラリーから直接戦場に出るのですが、《不屈の独創力》は一度追放しているので、《墓掘りの檻》による妨害を受けません。また、種がクリーチャー限定なのも《不屈の独創力》に劣る点です。仮に、追加の《不屈の独創力》としてデッキに加えるのなら、赤マナでキャスト出来る《異形化》に軍配が上がるでしょう。《神秘の論争》の餌食にもなりにくいですしね。

なお、このデッキで追加の《不屈の独創力》としては、《先駆ける者、ナヒリ》が採用されています。彼女の奥義4奥義:プレインズウォーカーの大マイナス能力を指す俗称。公式でも奥義(ultimate)と呼ばれている。最近は奥義を持たないプレインズウォーカーも増えました。は、《墓掘りの檻》にこそ引っ掛かりますが、種が必要無いのは利点です。プラスのルーティング能力に加え、小マイナスの除去能力で《血染めの月》を睨めるのも、嬉しい所ですね。サイドボードに《平地》があるのも、恐らくはこれを見越しての事なのでしょう。

その他の踏み倒し方

山本賢太郎 – グリセルシュート
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』(24点以上)
– メインボード(60)-
– 土地(20)-
4《汚染された三角州
4《沸騰する小湖
2《黒割れの崖
2《忍び寄るタール坑
2《蒸気孔
1《血の墓所
1《血染めのぬかるみ
1《
1《
1《
1《湿った墓
– クリーチャー(16)-
4《ヴリンの神童、ジェイス
4《猿人の指導霊
4《引き裂かれし永劫、エムラクール
4《グリセルブランド
– スペル(24)-
4《信仰無き物あさり
4《血清の幻視
2《稲妻
2《思考囲い
4《御霊の復讐
4《イゼットの魔除け
4《裂け目の突破
– サイドボード(15)-
1《すべてを護るもの、母聖樹
2《払拭
2《稲妻
2《汚損破
2《苦い真理
4《神聖の力線
2《粉砕の嵐

せっかくなので、他のマナコスト踏み倒し戦略についても、1つだけ触れておきましょう。

引き裂かれし永劫、エムラクール》を呼び出す手段として、今は《不屈の独創力》や《異形化》が人気ですが、以前は他の方法が主流でした。このデッキは、《御霊の復讐Goryo’s Vengeance)》と《裂け目の突破Through the Breach)》の2種を踏み倒し手段としていた為、Goryo’s Breach(日本ではグリセルシュート)と呼ばれています。

引き裂かれし永劫、エムラクール》か《グリセルブランド》を、墓地からたった2マナでリアニメイト出来る《御霊の復讐》は非常に強力であり、墓地を対策されようとも、手札から急に襲い掛かる《裂け目の突破》を加えた軸のズレた2本柱が、このデッキの強みでした。

環境の高速化が進み、《猿人の指導霊》も禁止されてしまった今では、《裂け目の突破》は流石に辛そうですが、《御霊の復讐》は今でも十分通用するスペルでしょう。モダンホライゾン2では、伝説のクリーチャー以外なら何でも2マナでリアニメイト出来る《頑強》も収録されており、リアニメイト戦略もファッティ5ファッティ:大型クリーチャー、マナコストの重いクリーチャーの総称。ここでは後者を指す。のマナコストを踏み倒す戦略としては、今後も要注目です。

出せさえすれば戦況を支配し得る、超強力なクリーチャーを早期に呼び出す戦術は、ロマンと爽快感に加え、実力まで備えた魅力的なデッキタイプです。モダンの広大なカードプールには今回ご紹介した以外にも、様々な踏み倒し手段、サポートするカードが溢れており、今後も増え続けるでしょう。近く登場する「イニストラード:真夜中の狩り」にも、有力なカードが追加されるのか、今後の新情報に期待が掛かります。


脚注一覧

  • 1
    手掛かり:「(2),このアーティファクトを生け贄に捧げる:カードを1枚引く。」を持つ無色のアーティファクト・トークン
  • 2
    ルーティング:カードをx枚引いて、y枚捨てるスペルの俗称。パーマネントの場合には、ルーターとも。
  • 3
    宝物:「(T),このアーティファクトを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。」を持つアーティファクト・トークン。
  • 4
    奥義:プレインズウォーカーの大マイナス能力を指す俗称。公式でも奥義(ultimate)と呼ばれている。最近は奥義を持たないプレインズウォーカーも増えました。
  • 5
    ファッティ:大型クリーチャー、マナコストの重いクリーチャーの総称。ここでは後者を指す。

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